2010/06/06

2007年-北国初夏の旅(追想:中編)

『旅の中盤、道南、道央の旅の記録
<5日目>2007/7/15(Sun)
昨日と同じホテルで同じく集合し、札幌をハブとしたドライブ旅行2日目。40歳を越えると旅につきものとなのは、「温泉」と相場が決まっている。この日は登別温泉へ日帰りで行く事になった。
札幌から南下し支笏湖湖を眺めながら登別へ向かう、山中の舗装道路は非常に道もよく日曜日なのに車も少ない。途中苫小牧から高速道に乗り換え登別までは一直線に行く事ができる。
カーナビの力は偉大である、到着予定時間もルートのほぼ正確に案内してくれる、前日にGAZOO.comでポイント設定しておけば、携帯からナビに走行計画を取り込める機能は、この旅には必須の機能となっていた。
登別温泉は、大湯沼という所を中心にした露出温泉の源泉をみる事が出来る。源泉地は、その山肌から湯気が立ち上り回りの緑深い木々を一部剥がした採掘現場のようにも見るが、漂う硫黄の匂いとむき出しの大地からボコボコと沸き上がる白濁した温水が自然の産物であるという事を主張している。公園になっている源泉地は、山々に囲まれた谷にあり、山中の遊歩道にまで上らなければ、1時間程でひと通り見る事ができる。何処にでもある事だが景勝地に硬貨を置いていく人がいる、そして硬貨は定期的に回収され施設の運営費に廻っていたりするものである、しかしここではそれは出来ない様子だ。全ての金属類は、温泉成分と反応し、真っ黒になっている。長期間置かれたらしいその物には、枝珊瑚のような部分白い突起が無数に出ている。
近くのホテルは、日帰り入浴が可能で、しばし温泉休憩タイムとなった、登別温泉はその源泉にも幾つかの異なった泉質があるらしく、硫黄泉、重曹泉、単純泉と湯船に書かれてる。自宅埼玉にも天然温泉はあるが大抵は、地下深く掘削して加温した食塩泉だが、ここはやはり昔ながらの温泉地だけあってかなり楽しめる。泉質の違いが比較できるので中々興味深い。
温泉で休憩を取り過ぎたか少し時間が押して来た。本当なら少し天候が良くなって来たので、洞爺湖まで再チャレンジしようかと計画していたが、友人の一人の帰京の飛行機の時間に間に合わなくなる。新千歳へ直行。その後札幌へ帰還し温泉ツアーの一日が終わった。
一人掛けて少し寂しくなったが、札幌の居酒屋で夕食で思わぬ食材に出会った、「八角」という魚である。当時は道内程度しか流通していなかったのか、埼玉ではお目にかかった事が無かった。「北国のフグ」とも言われ姿はチョウザメを小さくした深海魚だが白身で淡白な味わいは確かに似ている。最近では関東地域でも入手できる、一年程前に再会したので、丸ままで買って裁いてみたが半端なくこれが難しい、お勧めは店舗で三枚まで下ろしてもらった方がいい逸品である。
走行距離250km 平均燃費20.6km/L *プリウスは、高速道路を多用すると燃費が落ちる。理由は70km以上の速度では、常にエンジンが掛かって滑空走行ができなくなってしまうからだ。
<6日目>2007/7/16(Mon)
この旅も後半戦に入り、札幌をハブとした滞在型から移動型に行程を転換する。この日は、夕張を経由して十勝の牧畜エリアに向かう。
7月は、夕張メロンの旬なのだろうか、夕張に入ったらやたらとメロンの直売所の看板がある。少し広めのJAが経営している直売所で、土産もの用のメロンを実家に送り、これからの夜のデザート用にメロンを3玉購入した。値段は安いやはり地元価格である、等級の見方を詳しく店員が説明してくれたが、自分で食する分はそれほど贅沢もしなくて良いので、匂いだけで選んだ。北海道在住の子は、仕事先から一日休暇を貰って帯広の同じ宿泊先に一泊する予定である。メロンを積み込み、お勧めポイントの足寄町「ラワンブキ(ふき)の林」「オンネトー」を経由し十勝川温泉エリアに戻ってくる遠征ルートとなった。宿泊先に到着するまで車内は、常にここで積み込んだメロンの匂いで充満していた。
夕張から十勝方面へ向かうには、日勝峠を越えなければならない、この日から天気は快晴、紫外線が刺すような好天になったが、この峠越えだけは事情が違った。一合目〜七合目あたり間では快調な状態だったが、峠の頂上に近づくにつれて雲の中に入っていくような天候になる。八合目から先はヘッドライトが必要になる、濃霧と小雨の中前方視界は10m程に感じる。ところが峠越えた途端にまた晴天に戻る。それだけ標高が高かったのだと思うが、山を嘗めたら怖いという事を車の中からであるが実感した。
峠越えで少し時間をロスしてしまったので、急ぎ足寄へ向かう。ここに「ラワンブキ」という人の背丈より大きく傘の様な蕗が自生しているところがある、少し天候が悪い日が続いていたので、大人用とまでは行かないが、子供用にはなる程の蕗には出会う事ができた。コロボックルがで出来そうな、自然豊かなところである。次は「オンネトー」ここはオンネトー湖の湖畔であるただの湖畔だが、美しい・・・。まるで絵画のような造形である。天気の関係もあるが、洞爺湖、支笏湖と見て来たなかでここが一番絵になると感じた。阿寒富士を背景に鏡の様な水面、それと静寂。自然と写真の枚数が増えて行くが、やはり実物の色彩は再現できない。もし足寄に行く機会のある人は是非立ち寄る価値があると思う。
時間が圧してしまっていたので、後ろ髪を引かれつつ、十勝方面に戻る。十勝には、最終目的の「十勝ワイン城」で十勝ビーフを食べるという使命が残されている。日も沈み、閉館時間ギリギリ到着し北海道に入って初めての肉料理であった。この十勝ワイン城は、ワインの製造販売が主目的らしいが、併設しているレストランの眺望と十勝牛の料理がとても良い。時間も遅かったので、客も無く十勝の街を一望できる大窓から貸し切りでのディナータイムとなった。ビーフと合わせるなら折角ならご当地十勝ワインを頂きたい、「十勝アムレンシス」というワインを頼みビーフプレートで至福の食事を終えた。
さあこれからが大変だった、十勝ワイン城から宿泊先までの間、ワインに浸った私は、運転をカミさんに委ねることになった。下り道の高々15km程であったが酔いも覚める。19時を過ぎ車も人も疎らであった事が不幸中の幸いであった。ホテルの駐車場までは何とか自分で入れたが、私が外に出て誘導する・・車庫入れができないらしい。5-6回切り返し何度か轢かれそうになった。
宿泊先は、「北海道ホテル」結構老舗ホテルのようで、サービスが行き届いていた。昼間買ったメロンを食べようと思ったが考えてみればナイフが無い。旅にはナイフは必須である、沖縄ならダイビングナイフで代用する所だが、機材はない。仕方なくフロントにナイフを借りれないか聞いてみたがまあ当然ながら駄目。事情を話すとメロンを持って来こいと言われたので切るだけ切って貰えればと手渡して部屋に戻ると、10分もしないうちにルームサービスが来た、頼んだ覚えはないがメロンを持って来たというので、お礼を言ってサービス係の方に入って貰った。ワゴンに大きな金属のドーム、豪華な装飾の皿の上に綺麗に飾り切りされ8当分されたメロンがのっている。「これホテルのルームサービスで頼んだら1万円はするよな」という立派な料理になって帰ってきた。翌日のチェックアウト時、調理料金が入っていないので、訪ねたところ「お客様へのサービスです、またのご利用をお待ちしております」との事、恐れ入りました。老舗のホテルでも活況なところはこの様な「ナイフを貸せない」で済まさない気遣いとフロント+厨房の連係プレーがあるのだと再認識させられた。
もう一つ「北海道ホテル」には、世界に2つしかない「モール温泉」という特殊な温泉がある。この温泉は、石油になる前の段階で珪藻類が堆積して圧縮された地層から出る温泉で深緑色をした独特の湯である。普通の温泉とは全く異なり非常に柔らかい、重曹泉の滑りは重曹で皮膚の表面を剥がすような仕掛けになるが、ここでは、お湯自体はさっぱりとした柔らかさがお湯から与えられるように感じる。温泉が好きな方は是非チェックしてみてはと思う。
走行距離431km 平均燃費24.2km/L
<7日目>2007/7/17(Tsu)
十勝から北上し、冬場お世話になる富良野方面へ移動する、宿泊先は写真でしかみた事のない美瑛である。
天気は快晴、十勝には、北海道土産の定番「マルセイのバターサンド」で有名な、六花亭の本店がある。朝その本店でスィーツを買い付けて一路富良野へ。十勝を出ると風景は一変する。麦、蕎麦、ジャガイモ、コーンの畑が延々と続く、道もほぼ直線。
昨日の失態から少し、練習の為、カミさんに運転してもらったが、カーブも交差点も信号も無いから何の練習にもならないが、アクセルとブレーキの踏み具合を覚えたらしい。無理な[G]を感じなくなった。
昼食に、十勝は蕎麦も特産品らしく、十割蕎麦の看板がいくつもある。北海道在住の子のお勧めの蕎麦屋で昼食をすませ、冬場よく通った記憶のある看板の道に出た。もうじき富良野である。丘陵地が続きどんどん小麦色のグラデーションの風景が広がってくる。少し町に入ったかと思うと、直に「北の峰ゴンドラのターミナル」に到着した。夏のスキー場は、なにかゴルフ場の斜度を急勾配にしたようにも見える。滑走コースは一面の芝で緑がまぶしく、木々は葉延ばし森のように見える。冬の落葉して雪を被った風景とは、全く違う。
暑い、7月なのだから当然でだが、日差しが照りつける内陸部は、乾燥した暑さがある。麦畑や牧草地がなければ、もっと厳しい暑さになる事は、駐車場に入る度に感じた。富良野でのチェックポイントは、「富良野デリス」というプリン屋になっていた、朝からスィーツ三昧である。多数決で決定済みであった。富良野デリスの駐車場から大雪山がとても良いロケーションで観れる、お菓子の買い物には同行せず、3脚を使って、写真撮影の時間に当てた。雲が流れ刻々と変わる風景を同じように取り続ける、後で観てみると動画のような大量のデータが残された。
ここからは美瑛の丘陵地を巡り、JR美瑛駅で北海道在住の子と分かれる事になっている。美瑛の丘は、波がうねる様に連なり、小麦、ジャガイモ、コーンの他ラベンダー等の花の帯が幾重にも重なりあいおとぎ話の中に出てきそうなくらい、彩り鮮やかである。脇見運転はできないので、散在する展望公園に立寄り、デジカメにおさめた。しかし実物の切れ端でしかない、360度錦の波の中に居る感覚は関東では決して体験できない広大な大地と人の手による開拓の賜物である。
無事、友人が帰るのを見届け、この日の宿泊地は、美瑛のペンションである。
走行距離239km 平均燃費28.0km/L
<8日日>2007/7/18(Wed)
埼玉を出て一週間が経過した、北海道の中央部に居る。この日の行程は、「富田ファーム」というラベンダー製品で有名な農園散策し、次の宿泊地、当麻までの行程である。
ペンションの人によると、7月は調度ラベンダーが満開の時期で、昼間に行くと平日でも人だらけで風景を楽しむには向かない、出来るだけ早朝に行って農園の売店などが開店する前の方が良いとの情報を前日の夕食時に得ていた。朝6時に起床し朝食前に一走りして農園に入ってみた何時に開園なのかは分からないが、開門されて入園料もなく散策範囲は自由に行動する事ができる。この時初めて前日のアドバイスの意味がわかった、まだ7時前だというのに、もう写真のフレームに人が映らないことが無い、多分相手側も同じ事を考えているのだと思うが誰も花の迷路だけをフレームに納めたいという気持ちなのだろう、ウロウロしながら花畑を移動する。朝霧が少し掛かったのかもしれないが、その日は湿度が高くラベンダーオイルをたらした時の様に虫も落ちそうな芳香に包まれている。生のアロマセラピーである。ラベンダーも複数の種類があり、微妙に香りが違う。また、花の色や咲き方も様々で、各ラベンダーの種類が交雑しない様にする為か、他の花々の列がラベンダーの列を隔てるように植えられている。ここも丘陵地なので、うねる様な花の波間にいる感覚である。ラベンダーの花以外はまだ五分咲きという感じであったのが残念ではあったが、早朝のアロマセラピーはとても贅沢なひと時である。
富良野-美瑛一帯は、ランドスケープの宝庫だ、当麻までの距離は30kmにも満たないが、北の大地:北海道を象徴する景勝地の銀座である。遊覧ヘリが舞い、遠くには熱気球らしきものも見える。多分上空から「鳥の目」で見れば連なる丘陵にパッチワークを施したように見えるのだろう。こちらは「蟻の目」で散在するポイントを点々と歩き回った。この日の走行距離は、もしかすると車より徒歩の方が多かったかもしれない。
走行距離49km 平均燃費29.5km/L 100km以下の走行距離は、この旅最短であった。

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